21人が本棚に入れています
本棚に追加
妖精はぐっすり眠っていて、暗闇と黒い体が一体化したクロにまったく気づきません。
クロの前足がベルに届きました。
ゆっくりとベルを自分の方に動かします。
あと少しでベルをくわえられるというときに、うっかり切り株からベルを落としてしまいました。
地面につく寸前で、カメレオンが長い舌でベルをキャッチしましたが、振動でチリンと音が鳴ってしまいました。
「う~ん、なに?」
妖精が目を覚ましたようです。
クロがカメレオンからベルを受け取り、口にくわえて走り出しました。
カメレオンがクロの背中に乗って、妖精の状況を教えてくれます。
「急げ! 追いかけてくるぞ!」
「ああ! ベルがない! あっ、こら! ベルを返しなさ~い!」
焦った様子の妖精の声が聞こえましたが、クロは後ろを振り向かず、前だけ見て必死で村を目指しました。
最初のコメントを投稿しよう!