お風呂の精霊

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お風呂の精霊

しめしめ。あの男はもう私なしではいられないわ。そして、このお風呂は私のものよ。 「オーホホホホッ!」 誰もいないはずの深夜のお風呂に甲高い笑い声が響き渡る。声の主は弦田家のお風呂に浸かっている美しい精霊だった。 お風呂の精霊は自らの力の源泉となるお風呂好きの人間を探して、さまざまな家のお風呂を徘徊していた。そのとき、ちょうど運良く見つけたのが人の良さそうな弦田だった。 もっと良いお風呂にしたい。そう、リフォームよ。充実したお風呂にするため、あの男にはもっと稼いでもらわないと。 私ができることはお風呂用品のプレゼントだけ。次は何をプレゼントしようかしら。どんな量の水分も無尽蔵に吸い取ってカサカサになるまで乾燥させる悪魔のバスタオル、あまりにも肌触りが良くて永久にモフモフしたくなる禁断のバスタオルなんてどう? お風呂のせいで弦田の未来には暗雲が立ち込めていたが、彼には知る(よし)もなかった。
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