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当然の答え
弦田は頭頂部が薄かった。セルフレジでピッと通したら『一体いくらが表示されるだろう?』とたびたび考えるほどに立派なバーコード頭だ。だから精霊の質問に対する答えはフサフサの一択である。
けれども、即座にこの状況に適応できるほど弦田は心の広い人間ではなかった。
「どっちのシャンプーも違う。いつも使っているシャンプーはそこに置いてある普通のやつだよ」
「そのシャンプーは良くありません。早くシャンプーを代えないと取り返しのつかない事態になります!」
「取り返しがつかないって何?」
「私が言えるのは、恐ろしい運命が待っているということだけ。さあ、どちらのシャンプーにしますか?」
「どちらと言われても…」
「このチャンスを逃したら次はありませんよ。今だけのサービスです」
お風呂の精霊は車を購入するかどうか迷っているお客に迫る営業担当者の如く、即決するように促す。どうしてもシャンプーを渡したいらしい。
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