運命の就職先

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運命の就職先

面接試験のため、弦田はとある会社にやってきた。どうするか悩んだ末、頭はコキアヘアーのままだった。スーツ姿に真っ赤なフワフワコキアヘアー、さらに真っ赤な眉毛という奇抜な格好は人の目を引く。移動中の電車で周囲の視線が冷たく感じた。 それに対して、さすが一流企業は違う。受付けに頭が真っ赤なコキアがやって来ても何ら不自然な対応は取られない。むしろ、何故か尊敬の眼差しを向けられているようにも感じる。きっと社員教育がしっかりしているのだろう。 受付を済まし、面接の部屋に向う。扉をノックして部屋の中に入る。部屋には面接官3人が待っていた。弦田を見た面接官のひとりは口を開けてアワアワしている。 「あ、あなたは…」 隣に座るメガネ姿の女性面接官は大きく口を開け、まさかという驚いた顔をしている。 「その頭は…」 さらに年配の面接官は感心した様子で弦田の頭を凝視している。 「なんて素晴らしいんだ!」 「えっ?」 弦田は部屋の入口でポカンとしていた。そのとき、年配の面接官が弦田に質問を投げかけた。 「今すぐに白塗りメイクをして欲しい。唇と鼻は赤く塗って!」 「はっ!?」 「私の目に間違いはない。君は採用だ。おい、誰か黄色い服と赤と白の縞模様の靴下を用意してくれ!」 ここは某ファストフードチェーンの本社。弦田は満場一致で採用された。リアルなマスコットキャラクターとして販促活動に励んで欲しいと言うのが採用理由だった。やがて実績を積み重ねて出世の階段を登っていくのかもしれない。
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