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思わぬ再開
その日の夜、弦田はお風呂の中でウトウトしていた。面接試験で精神的に疲れていたのだろう。
ビクッ、心地良い眠りは突然終りを告げた。目が覚めて給湯リモコンの時計に目を向けると、居眠りする前の記憶よりも10分過ぎていた。
真っ赤なコキア頭になったかと思ったら、何故か気に入られて採用試験に合格するとは、ずいぶんと変な夢を見たものだ。
眠気を覚ますためにお湯をすくって顔を洗う。すると、怪しげな気配を感じた。
「お風呂の中で居眠りしていると溺れますよ」
「えっ?」
声が聞こえた洗い場の方を向くと、そこにはバスタオルを巻いた、あの美しい精霊が椅子に座っていた。
「お久しぶりです。お風呂の精霊です」
「夢じゃなかったのか…」
「ふふふ。真っ赤な髪型が似合っていますね。そのほうが素敵ですよ」
まんざらでもなさそうに弦田は自分の頭を触ってみる。モコモコで泡立ちが良い頭だった。
「ずっと聞きたかったんだけど、この頭は元に戻るのかな?」
「さあ?」
「さあって!」
「まあ、そんなことはどうでも良いじゃないですか」
「いやいや、重要事項だって!」
コキア頭のお陰で就職できたことは間違いないが、このままで良いのかどうか少し心配だった。
精霊はずっと弦田を見つめている。いつの間にか精霊が両手にボディソープを持っていた。弦田はそれをゆび指した。
「あれ? 手に持っているそれは?」
「あなたが使っているのはこの『杏仁豆腐のように甘く真っ白になるボディソープ』ですか、それとも『焼け焦げた干物の皮のように渋く真っ黒になるボディソープ』ですか?」
「どこかで聞いたことのある展開…」
弦田は密かに思った。真っ白になるボディソープは良いかもしれないと…。
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