二度目の初めまして

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 季節は巡り、一年の月日が過ぎた初夏。  二歳半になった真美は「ママ これ」、「パパ あっち」という具合に少し話せるようになっていた。  しかし、話せたからと言って全て安心というわけではない。  確かに、二つの言葉を繋げて話す「二語分」は習得したけど、発達年齢的には一歳半から二歳ぐらいと言われており。真美と同世代の子どもは、もっと先を進んでいる。  そして、一番心配なのは。 「ぎゃああああ!」  スーパーの床で手足をバタつかせて泣き叫ぶ。  また始まった。この癇癪だ。  そんな我が子を前に、私は宥めるわけでも、抱き上げてその場を離れることもせず、ただ傍観している。  すると私達親子に突き刺さるのは、冷ややかな周りの視線だった。  どうして毅然と叱らないのか? どうして泣いているのに抱っこしてあげないの? という批難の目。  我が子に対しての、憐れみの眼差し。  誰もそんなこと言わないけど、私たちをとらえる鋭い目が、そう言っているような気がして居た堪れない。  私だって、好きでそうしているわけじゃない。  一歳のうちは体も小さくなんとか押さえつけられたけど、二歳を過ぎたあたりから体も大きく力も強い為に抱き上げることが出来なくなった。  少し話せるようになったことから声をかけて落ち着かせようとしたり、毅然と叱ったり、諭すように語りかけたりもした。  だけどことごとく失敗し、真美を余計に怒らせてしまい騒ぎが大きくなるだけだった。  結果、私が出した答えは何もせず見守ること。  歯痒く、周りの視線は痛く、居た堪れないが、こうするしか選択肢がないのだ。  だったら娘を夫に預けて、外に連れて行かなければ良いと思うがそうはいかない。  あの人は娘の特性を変わらずに理解しようとせず、癇癪を起こしたら怒鳴りつけ娘は余計に泣き叫ぶ。  だからもう、頼りにしないと決めた。  十分程で落ち着いた娘に、どうして騒いでしまったのか聞くが、季節物を販売する為に設置された棚を指差すだけだった。  もう、何が言いたいのか分からない。  変化に弱いのは分かっているけど、その気持ちが理解出来ないから寄り添えない。  結局あれから「親子教室」には行かず、保健師さんとの面談も避け、買い物以外に出さないようにしている。  この子の発達を考えれば、向き合って考えなければならない頃まで来ているが、私は逸らしてばかり。  この子の特性から。いや、この子自身から。
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