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アパートに戻って来たのは夜八時。
家の部屋に灯りがついていた。
電気を消し忘れたのかと溜息を吐き、眠っている娘を抱っこして玄関の鍵を開けようとすると。ドアは勝手に開き、目の前には夫が居た。
いつも十時過ぎの帰宅が、当たり前なのに。
一応気にかけてくれていたんだと小さく溜息を吐いた私は、後で話がしたいと言った。
障がいか、そうじゃないかなんて、今はどうでもいい。
それより娘が困っていること、苦しんでいることを認めて、向き合わなければならない。
そう告げた。
夫はどんな反応をするだろう?
違うと、否定?
また子どもを変だと言いたいのかと私に対する、怒り?
もう聞きたくないという、拒否?
夫の反応によっては、私はこの先の夫婦関係を考える。
その覚悟の上で、淡々と話した。
俯いて額を両手で覆う姿から、彼なりの苦悩や葛藤があるのだろう。
外では家族の為に必死に働いて家ではこんな話、嫌に決まっている。
私も感情的に騒いで悪かったと思っている。
だけど、これだけは譲れない。
ありのままの娘を理解しようともしない、父親なんて。
「……」
ボソッと呟いた夫の一言に、私は静かに目を閉じた。
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