繰り返し

11/12

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
高校の卒業式。 ここまでくるのはあっという間だった。 でも今回は、思い返すと色々なことがあったと思う。 今までとは比べ物にならないほどの「数回目」の繰り返しに、そしてこれから先も続く日常の繰り返しに、俺は希望を見出せている。 「(あきら)、帰ろう」 「...うん。...って、...え!...今俺の名前...、」 唐突に呼ばれた自分の名前は、久しく呼ばれてなさ過ぎて少し違和感があった。 それでも俺の名前を再び呼んでくれたのがいっくんで良かったと、心の底から思っている。 「...嬉しい」 「今までは、なんか照れ臭くて」 「え、なんだ。そうだったの...てっきり俺に興味ないだけかと...」 突然のいっくんの内心の吐露に、俺は思わずそんな言葉を続ける。 それを見たいっくんはたまに見せる僅かな笑顔を浮かべて、ゆっくりとその視線が合わされた。 「興味なかったらついてきていいなんて言わないよ。僕も暉のこと、ちゃんと好きだから」 「...っ...、」 「この先もずっと一緒。僕だっていつもそばにいる」 久々に溢れた涙が嬉し泣きだなんて。 やっぱりいっくんは、俺の心を掴んで離さない。 「いっくん、ありがとう。大好き」 そう言って笑えば、いっくんは照れたようにはにかんで優しく手を握ってくれた。 fin.
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加