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「良かった、消えてない」
「...だね。俺もびっくり」
「ここから先は、俺が先に行っちゃうね」
「どうなんだろう。でもそれはそうか、俺にこの先はないはずだもんね」
運命の日を超えて、俺はいっくんといつも通りの日常を過ごしていた。
しかしそれは、今までの俺にはあり得ないほどに嬉しいことだ。
やっと前に進めた。きっとそうだ。
いっくんのおかげで。
「このまま行くと俺、ずっといっくんに憑き纏うことになるけど」
「別にいいんじゃない」
「...はは、そっか」
いっくんは相変わらず淡々としている。
それでも以前と比べて、その雰囲気は幾分も柔らかい。
「この先もずっと、いらないって言われない限り、いっくんのそばにいるから」
「うん」
一生懸命紡いだ言葉も、いっくんはたった一言の相槌で終わらせる。
それでも、いっくんに忖度などないとわかっているから、俺はその言葉を信じることができた。
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