8人が本棚に入れています
本棚に追加
高校の卒業式。
ここまでくるのはあっという間だった。
でも今回は、思い返すと色々なことがあったと思う。
今までとは比べ物にならないほどの「数回目」の繰り返しに、そしてこれから先も続く日常の繰り返しに、俺は希望を見出せている。
「暉、帰ろう」
「...うん。...って、...え!...今俺の名前...、」
唐突に呼ばれた自分の名前は、久しく呼ばれてなさ過ぎて少し違和感があった。
それでも俺の名前を再び呼んでくれたのがいっくんで良かったと、心の底から思っている。
「...嬉しい」
「今までは、なんか照れ臭くて」
「え、なんだ。そうだったの...てっきり俺に興味ないだけかと...」
突然のいっくんの内心の吐露に、俺は思わずそんな言葉を続ける。
それを見たいっくんはたまに見せる僅かな笑顔を浮かべて、ゆっくりとその視線が合わされた。
「興味なかったらついてきていいなんて言わないよ。僕も暉のこと、ちゃんと好きだから」
「...っ...、」
「この先もずっと一緒。僕だっていつもそばにいる」
久々に溢れた涙が嬉し泣きだなんて。
やっぱりいっくんは、俺の心を掴んで離さない。
「いっくん、ありがとう。大好き」
そう言って笑えば、いっくんは照れたようにはにかんで優しく手を握ってくれた。
fin.
最初のコメントを投稿しよう!