08 レイラ

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08 レイラ

 気付けば、腹の上の淫紋は満たされていた。  もはや何度目か分からないイオニアの吐精を受けて、レイラはまたブルッと身体を震わせる。せっかくお役御免となった淫紋を確認することもなく、二人はまた唇を合わせた。 「………不思議だわ、」  レイラは独り言のように呟いた。  未だ衰えない剛直を再度蜜口に宛てがいながらイオニアが首を傾げる。 「童貞だしダサいし、アンタのことなんて全然好きじゃなかったのに……なんだか今はドキドキする」 「失礼なヤツだな。ちょっと分かるけど」 「ふふっ、これも淫紋の効果?」 「どうだかなぁ」  ぐちゅっと根元まで押し込まれると、レイラは仰け反って喜んだ。  この気持ちも快感も、すべてが淫紋のせいだと言うならば、イオニアがかなり凄腕の淫紋術師であることを認めざるを得ない。きっと今まで彼に淫紋の作成を頼んできた依頼者たちも、さぞかし納得のいく結果を得たのだろう。  重なる肌の温度が気持ち良い。  ずっとこうしていたいとさえ思う。 「ねぇ、イオニア」 「んー?」 「私たち付き合わない?」 「………へ?」  正気を疑うようにマジマジと見つめられて、レイラは赤面した。今までは告白されてなんとなく付き合っていたから、こんなことを自分から言うのは初めてで、耐え難い羞恥心に襲われる。 「いや、だから……えっと、身体の相性も良いでしょう?私は貴方が初めて抱いた一般人でもあるし……」 「っは、今更恩着せがましいこと言うんじゃねぇよ。お前が感じてるホワホワした気持ちは全部淫紋の効果だ。術が溶けたらどうせフライパン片手に追い回してくるんだろ」 「そんなことしないわよ!」 「悪かったよ。三ヶ月掛かりの計画がおしゃかになっちまったのは残念だけど、お前のせいじゃないもんな。嫌な思いさせてごめん」 「なんで謝るの……!私はそんな、」 「もう淫紋もいっぱいになってる。俺も疲れたからこれで終わりにするか。レイラはここが好きなんだよなぁ?」  まだまだ話したいことはあったのに、イオニアの太い指が敏感な陰核を捉えると、意識はそっちに持って行かれてしまった。  ゆるく撫でるように触れていたかと思うと急にグリッと潰される。ただでさえ突かれながらの愛撫に弱いレイラは何がなんだかよく分からなくなった。 「イオニア……ッ、これ以上、イきたくない、」 「大丈夫だ。もうすぐ終わる」 「っあ、あぁ、それすき……ッッんん!」  プシッと潮を吹くレイラを見て満足げに笑うと、イオニアはその手で頭を撫でてくれた。 「レイラ、ありがとうな。良い思い出になった」 「え?」  その意味を聞き返す間も無く、強い力で抱き竦められて硬い肉塊がレイラの芯を突いた。 「ひぅっ……!??」 「淫紋の解除は俺がしておく。心配しなくても淫紋が浮かんだ状態では受精しない」 「ほんとに……?」 「本当に。だから最後は一番奥に出すから、しっかり受け止めてくれよ」 「イオニア!?待って、やぁ、ああっ」 「………っく、」  焼き尽くすような熱をお腹の奥で感じながら、レイラはゆっくりと意識を手放した。争い難い眠気に飲み込まれてしまったのだ。  目を覚ますとレイラは見慣れた自分の部屋に居て、綺麗な身体には清潔な服が着せられていた。二階の部屋はもぬけの殻となっており、無礼な淫紋術師は彼の滞在した期間の宿泊費と、ご丁寧に宿屋の主人に対する謝礼金を置いて姿を消した。
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