兵藤恵

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兵藤恵

 兵藤恵は中学生の頃から両親と折り合いが悪かった。両親は出来のいい6歳年上の姉兵藤舞を可愛がり出来の悪い兵藤恵の事は可愛がろうとしなかった。  初めのうちは恵も姉みたいになろうと勉強もスポーツも努力して頑張っていたが途中からどんなに頑張っても姉の舞みたいになるのは無理だと諦めていた。  その為、兵藤恵は中学生の頃から夜遊びを繰り返す事になった。高校は通信教育でなんとか入学する事が出来たが高校に入学すると恵は両親が自分に関心が無く姉の舞ばかりを愛してる態度にイライラしていた。そして、自分の居場所はここではないと感じるようになっていた。  そんな両親を毛嫌いしていた兵藤恵の夜遊びは益々酷いものになっていた。  この頃から兵藤恵は外泊までするようになっていた。  ちょうどその頃、出来のいい姉の兵藤舞が病に倒れた。病院に急いで両親は舞を連れて行ったが舞の病気は既に進行していた。癌だった。  病の姉は僅か三ヶ月で亡くなってしまった。  その時から両親の関心は出来の悪い妹の兵藤恵に向いていた。兵藤恵に自分の病院を継がせようと必死で勉強を教えこれまでとは違いありったけの愛情を両親は恵に注いだ。  姉のように勉強ができない兵藤恵にとってそれは苦痛でしかなかった。  兵藤恵はまた両親から逃げ出し簡単な荷物を持って友達の家に向かった。  いつもと同じように自分の居場所は自宅じゃないと信じて自由を求めて。それでも、通信の学校だけは続けていた。  兵藤恵の父親も母親も高校の授業料だけは支払っていたからだ。  そして今、兵藤恵は自宅に荷物を取りに戻っていた。その時、恵の母親照美と父親の大輔は恵に言った「今日は家に居なさい。大事な話があるんだ。恵、スマホ持って行くのか?スマホは置いて行きなさい。スマホ持ってると大変な事になる」 恵は両親の言葉を聞かず黙って家を出て行った。  家にほとんど帰らずニュースもテレビも見ないで遊びまわっている兵藤恵には「スマホを置いて行きなさい」と両親が兵藤恵に言った意味がわからなかった。  続く
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