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朝の大学
さあ、残念ながら今日は朝から大学だ。ゲーム疲れで少々辛い。そもそも行くことが辛いのだが。ちなみにこのゲーム疲れは夜中ではなく、つい数分前のものだ。アプリを開いた時の“デーン”という独特な低い音を朝聴くのが俺の日課だ。たまにできないが。
家から大学までは五十分かかる。とても長い。だがこの時間は意外と楽しい。ゲームはできないが、景色を眺めて物思いにふけたり、どの武器買おうか悩んだり…課題やらないとと思ったり。ここまでの時間はとても有意義だ。その有意義が少し辛くなるのが…
「あの人…めっちゃイケメンじゃない?」
「ほんとだ。やばい」
そう、これだ。大学に行くとこの現象が毎日起こる。女子からイケメンと称される。ありがたいが毎日毎日騒がれると少し迷惑だ。こんなことを言うと恨まれるかもしれないが、こちらもこちらで辛いのだ。
「仁和井くんだっけ?かっこいいよね」
「あの人と付き合えたら最高じゃない?」
そんなことはない。常にゲームか現実逃避しか頭にないんだから。
「おはよう。朝から人気者だな」
人の気も知らないで呑気にそう言ってくるのは大学で唯一の友達の柴(しば)。
「仁和井(にわい)くんかっこいいとか昊(そら)くんイケメンとか。俺はお前が羨ましいよ…!!俺はそんなこと…言われたことない…」
そんなに良いものではない。毎日だぞ。鬱陶しくなる。でもせっかく褒めてくれてるから文句も言えない。
「そういや昊って教室一緒だっけ?」
「多分違う。俺はあの校舎の五階」
「あ、じゃあ違うじゃん。俺はこっちの校舎の五階だからな…五階は一緒だな」
なんて返せば良いのか…とりあえず、うんと言っといた。
「相変わらず冷めてるな…いや、クールっていうのか?うーん、わからん。まあ、儚いイケメンだな」
自己完結した。
「じゃあ俺そろそろ行くわ!じゃあな」
「じゃあまた…いつか」
「いつかっていつだよ笑。明日な」
「うん」
ここで柴とは別れた。そこからとぼとぼ歩いて校舎に入った。エレベーターホールには誰もいなかった。それもそのはず。今は授業開始四十分前だ。いつもこのエレベーターホールは激混みだ。だから誰もいないこの空間は最高だ。すぐに来たエレベーターに乗って五階のボタンを押す。多分、教室には来ていても三人くらいだからゲームができる。あまり人目があるところでゲームはしたくないのでこの時間は絶好のチャンスだ。
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