朝の大学

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 五階に着いて教室を探す。一番奥にあるのが今からの授業の教室。長い廊下を足速に進み、そして…教室のドアを開けた。  右端の席に一人の女の子がいた。そうそう彼女は金森天恵(かなもりそら)。同じクラスでとても真面目。基本的に一人でいることの方が多いように思うが、その辺に関しては俺も同じだ。なぜこんなに彼女のことを覚えているかというと、名前が同じだからだ。でもそれだけじゃない。授業中の班活動で一緒になった時に自分の意見を丁寧に伝えていたところ、あと優しいところ。俺が意見をまとめきれていない状態で話したのに理解しようとしてくれた。とにかく丁寧で優しい子というイメージだ。  そんなことを思いながらドア付近の左端の席に座る。授業に必要なノート、プリント、筆記用具を用意するとスマホを取り出した。ロックを解除して、ホーム画面が開く。ゲームコーナーを見つける。七個あるゲームアプリの中からあのシューティングゲームのアプリを開く。静かにスタート画面が現れる。時間はそれなりにあるから一戦くらいはできるだろう。バトルと書かれているところを押す。そして武器を選択する。いつもは安定にリボルバーとロケットランチャーを装備するが、前横さんに教わった。リボルバーとマシンガン、手榴弾の組み合わせがおすすめだと。マシンガンは連続攻撃ができるため非常に便利だが、弾の数が少ない。そのため一発で十分な時はリボルバーを使う方が効率が良いらしい。比較するために今日の朝は元々の武器を使っていたが、今からの戦いは前横さんおすすめの武器で行く。装備が終わり、ついにバトルスタート!と思った時 “デーン” 俺は呆気に取られた。急に音がしたからではない。聴き覚えしかない音だったからだ。この独特な低い音。間違いない。今やってるシューティングゲームアプリを開いた時の音だ。当然、その音を鳴らした人物は一人しかいない。
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