151人が本棚に入れています
本棚に追加
優しいキス
セフレ……。恋人……。結婚? 好き……。愛してる……。……分からない。
二年前、星哉さんに初めて会った日に抱かれた。
お酒に酔ってもいたけれど……。それでも少なくても嫌いな男になんて抱かれない。指一本触れられたくもない。傍にいるのも嫌。
星哉さんは、とても優しく抱いてくれた。大切なものを慈しむように愛おしむように……。その温もりが心地好くて彼に惹かれていったのは間違いじゃない。
そして私は二週間後も、この部屋に来た。
嫌だったら来なければ良かったのに、それで終わったのに……。
嫌いじゃなかったってことは、好きだったんだろうか?
体だけの付き合いのつもりだった?
星哉さんは私の心まで包み込んで抱いてくれた。女であることの悦びを教えられた。こんなにも感じられるなんて思ってもいなかった。
ただ体の快楽だけを求めていたんじゃなかった。星哉さんだから、星哉さんが与えてくれる悦びだから……。
愛してる。愛していたんだ。私は心から星哉さんを……。
「景子、愛してる」
そっと引き寄せられ抱きしめられた。
「ドレスは着飾るだけのものじゃないよ」
サファイヤブルーのドレスをスルスルと脱がされていく。
私も星哉さんのタキシードを脱がす。シャツのボタンを一つずつ外して……。
星哉さんの熱い素肌が私の肌を包み込む。その温もりに涙が零れた。
ベッドの上で私のすべてを星哉さんに委ねる。濃厚なキスに星哉さんの手と指先の繊細な動きに……。
うつぶせにされて長い髪をそっとよけながら襟足を肩を星哉さんの唇が辿っていく……。肩から背中へ……。
「ここ景子の弱点だよね」
そう言いながら攻められる。あまりの気持ち良さに声が抑えられない。星哉さんは巧みで、どうしようもなく感じてしまう。
星哉さんは私のすべてを知っている。どこを触れば感じるのか、どこを攻めれば声が出てしまうのか……。もう後は声がかすれるまで鳴かされ続ける。私は、あまりの絶頂感に気を失った。
「景子」
名前を呼ばれて朦朧としていた意識が戻ってくる。体を優しく撫でられながら……。
「星哉、愛してる」生まれて初めて言った。
「景子、僕は、ずっと前から君だけを愛してるよ」
星哉さんの優しいキス……。
ただのセフレ……。
そう思っている相手が、その先の人生の最高のパートナーになる。
かもしれないですよ……。
FIN
最初のコメントを投稿しよう!