3.結婚初夜

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「ユリウス殿下……」  エリスは胸の前で両手を握りしめ、瞼をぎゅっと閉じる。  怖い……怖い。  これからユリウス以外の男に抱かれるかと思うと、怖くて怖くてたまらない。  いっそのこと、アレクシスが来なければいいのに。自分との初夜を拒否してくれたらいいのに――そう願ってしまうほど、恐ろしくてたまらない。  けれどそんなエリスの願いは叶わず、まもなくして、アレクシスが部屋を訪れた。  バスローブを一枚羽織っただけのアレクシスからは、強いアルコールの匂いが漂ってくる。  かなりの酒を摂取したのだろう。  酷く虚ろなアレクシスの眼差しに、エリスは強い恐怖を覚えた。  エリスは酒が嫌いだった。  父が酒に酔う度に、エリスの身体を殴ったからだ。    身を固くするエリスに、アレクシスは吐き捨てるように命じる。 「脱げ」――と。 「……え」 「脱げと言っている。俺の妻ならば、夫の手を煩わせるな」 「――っ」 (……怖い)  自分はこれから、本当にこの男と夜を共にしなければならないのか。  そう考えると、恐ろしさのあまり逃げ出してしまいたくなった。  けれど、そんなことが許されるはずもない。 (だってわたしはもう、この方と結婚してしまったのだから……)
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