8.突然の謝罪

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(急にどうなさったのかしら……)  エリスは一瞬放心するが、すぐに我に返って返事をする。 「申し訳ございません。皇子妃が料理をするのは、よくありませんでしたか?」 「いや、そうは言っていない。――ただ……」 「ただ……?」 「どんな料理を作るのだろうかと思ってな」 「……? 殿下は、料理に興味がおありなのですか?」 「興味と言うか…………いや、もういい」 「…………」 (いったい何なの……?)  エリスは困惑した。  目の前のアレクシスが、まるで自分と会話したがっているように思えたからだ。  絶対に有り得ないことだとわかっているのに、一瞬でもそう感じてしまったことが、自分でも不思議でならなかった。 (もしかして、どこかお身体の具合でも悪いのかしら? でも、もしそうならこちらにいらっしゃったりはしないはず。……やっぱりわたしの気のせいね)  エリスは再び食事を食べ始める。  だが、食後のデザートが運ばれてきたときのことだ。  アレクシスが突然「人払いをしろ」と言い出した。  それを受けてセドリックを含めた全ての使用人は外に出され、部屋にはエリスとアレクシスだけが残される。  当然エリスは恐怖した。  アレクシスと二人きり――初夜のことを思い出し、身が縮んだ。  いったい自分は何を言われるのだろうか、何か粗相をしてしまったのだろうか、と。  そんな中、アレクシスが口にした言葉。それは、エリスの予想を上回るものだった。  なんとアレクシスは「すまなかった」――と、謝罪の言葉を口にしたのだ。
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