9.マリアンヌとのお茶会

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9.マリアンヌとのお茶会

 アレクシスがエメラルド宮に居室を移して二週間が過ぎた日の午後、エリスは馬車で水晶宮に向かっていた。  第四皇女マリアンヌが主催するお茶会に出席するためである。  第四皇女マリアンヌとは、クロヴィスの実妹で皇后の三人目の子だ。  絵画や音楽など芸術性に優れた才能を持ち、二十歳という若さでありながら公共事業として美術館や音楽堂の建設に力を入れていると聞く。  クロヴィスと同じく美しい金髪(ブロンド)と碧い目をした、人形のように愛らしい見た目の女性である。    またアレクシスの情報によれば、彼女はシーズンの間、月に一度このようなお茶会を開いているとのこと。  招待客は毎度三十名以上という大規模なもので、その全員が伯爵家以上の娘だという。 (どうしましょう……。何だか緊張してきたわ)  帝国貴族の伯爵位というのは、周辺諸国の侯爵、あるいは公爵程度の力を持っているものだ。  エリスはアレクシスの妻とはいえ、片田舎の小国の公爵家の出身。  そんな彼女が、今日のような高貴な娘たちとのお茶会に不安を感じるのは当然のことだった。 (でも、しっかりしなくちゃ。今日のお茶会は、わたしと殿下の仲の良さをアピールする絶好の機会だもの)  エリスは二週間前のアレクシスの言葉を思い出す。  俺は女が嫌いだ。だからこれ以上妻はいらない。そのために、俺たちの仲が良好であると周りに示しておきたい――アレクシスはそう言った。  それを聞いたとき、エリスは確かに思ったのだ。  彼の力になりたい。アレクシスのことはまだ怖いけれど、彼の事情も理解してあげたい、と。 (わたしは彼の妻だもの。できるだけのことはするわ)
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