57人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
そんなことを考えている間に、目的地に着いたようだ。
エリスは馬車から降り、侍従の案内で会場までの長い廊下を進んでいく。
水晶宮と呼ばれるだけあって、建物のほぼ全てがガラス製だ。
流石に床は大理石だが、それ以外の壁や天井、梁や柱に至るまで、ガラスで造られている様は圧巻である。
(綺麗。本当に水晶でできているみたい。帝国って凄いのね)
エリスがエメラルド宮を出るのはこれが初めてだ。
輿入れのときは精神的に追い詰められていたために、帝都の様子を見ている余裕はなかった。
だからエリスが街を見るのもこれが初めてなのだが、帝都の街並みは美しく立派で、エリスをどこまでも驚かせた。
お茶会の会場は巨大な温室のようになっていた。
ガラスでできたドーム状の広い建物の中には、青々とした沢山の観葉植物や、色とりどりの花が咲き乱れている。
いくつも並べられたテーブルでは、先に到着したであろう令嬢たちがお喋りに興じていた。
その和やかな雰囲気に、エリスはほっと胸を撫でおろす。
するとそんなエリスに、一人の女性が近づいて声をかけた。
「ようこそ、エリス様。来てくださって嬉しいですわ。わたくしがマリアンヌです。どうぞよろしく」
「――!」
金糸のように眩い髪に、泉のように碧い瞳。透き通るような白い肌。そして、たおやかな仕草。
噂に違わぬ美しいマリアンヌの姿に、エリスは思わず目を奪われた。
けれどすぐに我に返り、お辞儀をする。
「お初にお目にかかります、エリスと申します。本日はお招きいただき大変嬉しく思います」
すると、マリアンヌはふふっと柔らかく微笑んで、エリスを席に案内してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!