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――だが、マリアンヌはエリスの言葉が信じられないようだ。
「そんな、まさか……アレクお兄さまが女性と食事をなさるなんて……」と、愕然とした様子で肩を震わせている。
そんなマリアンヌに、エリスはにこりと微笑み返す。
「まだまだ殿下のことはわからないことだらけですが、わたくしたちなりの夫婦の形を作っていけたらと……今はそう思っておりますの」
「――!」
それはエリスの本心だった。
アレクシスが女性を嫌いだというのなら、それはそれで構わない。自分だってアレクシスに恋心を抱いているわけではないのだから。
けれどそれでも、これから先共に過ごしていくというのなら、少しでも良好な関係が築けた方がいいに決まっている。
するとそんなエリスの言葉にマリアンヌは感極まったのか、瞳にうるうると涙を浮かべた。
「ああ、なんてお優しい方なのかしら……。エリス様、どうかアレクお兄さまのこと、よろしくお願いね……! わたくしは、お二人のことを心から応援しているわ……!」
「ありがとうございます、マリアンヌ様」
「困ったことがあったらすぐに相談するのよ? クロヴィスお兄さまに言い付けてあげるから。アレクお兄さまは、クロヴィスお兄さまには昔から頭が上がらないのよ」
「そうなのですか?」
「そうなの。理由はわからないけれど。――あと、アレクお兄さまはグリーンピースがとてもお嫌いね。何か仕返ししたくなったら、食事にグリーンピースを混ぜるといいわ」
「グリーンピース……」
「あとは、そうね。カマキリもお嫌いよ。昔ルーカスお兄さまが、寝ているアレクお兄さまの顔にカマキリを乗せるイタズラをしたことがあって……」
「起きた時にカマキリが顔に乗っていたら、わたくしもトラウマになりそうですわ。……では逆に、お好きなものは――」
「そうね。好きなものは――」
こうしてこの後も二人は終始和やかなムードで、アレクシスについて語るのだった。
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