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21.アレクシスの決意
その夜、夕食を終えた時間帯。
巨大な絵画や重厚な家具を配したリビングで、エリスはお茶を入れていた。
疲れた様子を見せるアレクシスの、せめてもの気分転換になればと思ったからである。
(セドリック様は気にしなくていいと仰っていたけれど……)
ティーワゴンでお茶を用意するエリスの向こうには、ソファで項垂れるアレクシスの姿。
その、いつになく物憂げな様子のアレクシスを、エリスはどうしても放っておけなかった。
(食事も残されていたのよね。こんなこと、初めてだわ)
――エリスは、夕方のことを思い出す。
図書館から帰宅したエリスがさっそく本を読んでいると、アレクシスがセドリックを伴って、いつもより一時間も早く帰宅した。
侍女からその知らせを聞いたエリスは、心の底から驚いた。
なぜなら今まで一度だって、アレクシスが仕事を途中で切り上げて帰ってきたことはなかったからだ。
エリスは急いで身支度を整え、出迎えに走った。
すると、アレクシスの様子がどうもおかしい。朝と比べ、明らかに顔色が悪いのだ。
もしや身体の具合が良くないのだろうか――心配になって尋ねてみるが、そんなことはないと言う。
セドリックに聞いても「身体は全くもって健康ですから、ご心配なさらず」と答えるだけだった。
けれど実際に、アレクシスの様子がおかしいのは事実である。
夕食中はずっと上の空で、いつもなら決して残さない夕食を残し、最近は必ず聞いてくる「今日は何をして過ごしていたんだ?」という問いかけすらしてこない。
そんな状態のアレクシスを、放っておけるわけがない。――そう思うくらいには、エリスはアレクシスに情を抱いていた。
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