21.アレクシスの決意

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(きっとお仕事のことでお悩みなんだわ。だとしたら、わたしにできることは限られているけれど……)  悩んだ末に、エリスはアレクシスをお茶に誘うことにした。断られることを覚悟して。  だがアレクシスは一瞬ためらう様子を見せたものの、すぐに誘いを受けたのである。 「殿下、こちらカモミールティーですわ。リラックス効果や安眠効果がありますの。少しは気分が安らぐかと」 「ああ、……いただこう」  エリスが声をかけると、アレクシスはどこか緊張した面持ちで、テーブルの上のカップを持ち上げる。  そして一口含むと、ほっと息を吐いた。どうやら口に合ったようだ。  エリスは安堵しながら、反対側のソファに腰を下ろし、目の前のアレクシスを見つめる。 「あの、殿下。差し出がましいことを申しますが……」 「……?」 「もし、もしわたくしにできることがあるなら、何でも仰ってください。こうしてお茶を入れるでも、お話を聞くでも……殿下の憂いを取り除くお手伝いを、させていただきたく存じます」 「――っ!」  刹那、アレクシスはハッと息を呑んだ。  相変わらず表情は読めなかったが、少なくとも、驚いているのは確かだった。 (殿下は、どうしてこんなに驚いているのかしら)  エリスからしたら、悩んでいる者に手を差し伸べるのは当然のこと。  だから、アレクシスがこれほどまでに驚く理由がわからなかった。  けれど言われた方のアレクシスは、『嫌いな男に茶を振る舞うだけでなく、そんなに優しい言葉をかけるなんて、君は女神か何かなのか』などと思っていた。  そんなアレクシスの考えなど露知らず、エリスはアレクシスに微笑みかける。  その温かな眼差しに、アレクシスは決意した。 「ならば、一つだけ尋ねていいか?」――と。  エリスが頷くと、アレクシスは瞳に不安の色を滲ませながら、こう問いかける。 「君は、どうして俺に優しくする? 俺のことを恐れているんじゃないのか?」 「……え?」
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