朝霧探偵の事件録

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道路交通法上、道路の曲がり角や交差点から五メートル以内は駐停車禁止場所になってはいるが、それを行う奴らは一々細かいことを守ってなどいない。いかに人に見られず、速やかにできるかの方が重要なのだ。 連れ去ったあとで一旦閉じ込めるとすれば廃ビルだろうか。いや、廃ビルに出入りがある方が逆に怪しまれる。とすると、アパートの一室か。だが絞り込むにしても範囲が広くて特定できない。 朝霧は地図から一度視線を外し、リストが書かれたメモを再度手に取った。ベレッタはイタリア、コルトガバメントはアメリカ、グロックはドイツ製だ。 銃は航空機には載せられない。航空法で危険物として引受制限貨物に入っているし、万一紛れさせてもX線検査で露見する。それに、製造地が異なるものを一気に輸入するのは難しい。 とすると手段としては海上輸送である。コンテナでももちろんX線検査はあり、画像は目視での確認だが、息のかかった人間がいれば見過ごされる。それとも正規ルートは通らないのか。 手口はどうあれ、港の倉庫街にはユーロトレーディング所有の倉庫がいくつかある。密輸品はそのうちの一つに保管され、指定された日時に繋がりのある相手に引き渡し、同時に見返りを受け取る――とすれば、倉庫街近くかその中に管理事務所があるはずだ。
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