朝霧探偵の事件録

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「誰だお前っ」 「悪いな。暴れられると困るんでね。女性を一人隠しているだろう。場所は?」 噛みつかんばかりに吠える見張り番に、淡々と声を落とし訊ねた。 「何のことか俺にはさっぱりだね」 「あぁ、もう一発欲しいか」 再度手を構えると、サッと顔色が変わった。 「おっ、おく、おく、奥の部屋だ! 見張りが一人立ってる」 「助かるよ。手間が省けた」 ほっと表情が緩んだのを認めると、首の後ろをトン、と手刀で叩く。見張り番の身体がゆっくりと倒れていった。 「ちょっと寝てて貰おうか」 玄関口まで引きずり込むと、真っ直ぐ進んで奥の部屋へと進む。教えられた通り、見張りが立っていた。先ほどの男と似たような体格だ。 「ここへ部外者は入れちゃいけないことになってるんだが」 「あいにくそれは聞けないな」 「それなら、力づくで止めるまでだ」 男が熊のように両手を上げて突進してくる。朝霧は斜めに低く構えると、ジャケットの襟元を掴んで引き寄せ身体を入れ、反動を利用して投げ飛ばした。 うめき声を上げて伸びてしまった見張り番の両手首と足首を結束バンドで纏め上げながら、ぽつりとこぼす。 「構えが大きすぎる。それから脇が甘いな」
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