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ドアノブに手をかけると、簡単にノブが回った。
どうやら施錠はされていなかったらしい。
ゆっくりと開くと、部屋の片隅にいた女性と目が合った。物は何もなく、がらんとしている。
「小此木、和賀さんですね」
「はい、あの……」
「探偵の朝霧といいます。羽倉支店長の依頼であなたを捜しに来ました。足首、失礼しますね」
断りを入れてから、足首を縛っていた縄に手をかける。ストッキングの上から、うっすらと痕が残っていた。
「痛みはないですか? 他にお怪我は」
「痛みは少し……。怪我はないです。閉じ込められてはいましたけど、食事があったのと決まった時間に用を足せていたので、体調はそこまで悪くありません。支店長が……そうですか。託してて良かったです」
ほっと口元を綻ばせると、だいぶ気を張っていたのだろう、溢れ出る涙をそっと拭っている。
小此木から少し離れ、入口を警戒しつつ、携帯を取り出すと発信履歴からリダイヤルをした。
『はい、矢代です』
「朝霧です。至急応援回して下さい。それから、救急車の手配も。場所は港埠頭の――」
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