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「それでその日の夕方に小此木から預かったのですが、私にはどう見ても普通のメモにしか見えなくて……。コピーするほどのものなのでしょうか」
たしかにメモはアルファベットと何桁かの数字がびっしりと書かれていて、何かの製品の型番なのだろうと想像はつく。しかし見る人が見れば何のメモなのかはすぐに分かってしまう。
「羽倉さん。このメモを落とされた方の情報を知りたいのですが、貴行の防犯カメラやATMの記録を見せて貰えませんか」
「はい、構いませんが……。あの、小此木の行方に何か関係があるんでしょうか」
大有りだ。おそらく小此木は何のメモか分かった上で咄嗟にコピーを取っている。
「えぇ。現時点では可能性があるとしかお伝えできませんが早く動くに越したことはありません。ご協力いただけますでしょうか」
「分かりました」
***
「……こちらが、小此木がメモを渡した時の映像です」
「少し、拡大できますか」
「はい。多少画像が粗くはなりますが」
映り込んでいる人物はライトグレーのジャンパーを着た、短髪の男性だ。下はスラックスだろうか。自動ドアが開き切る前に入店しようとし、整理券も発行せずに小走りに窓口へ向かっているのを見ると、だいぶ焦った様子が伺える。時刻は午後一時半頃だ。
「ATMの映像も見せていただけますか」
「はい。三台あるのですが、一つの画面で見れるようになっています」
「それは助かります」
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