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ジャンパーの襟元に白っぽいものが見て取れたので、おそらくはワイシャツ姿なのだろう。とすると、ジャンパーは会社貸与のものか。
勤め人であれば、会社の最寄りのATMを利用する傾向が高い。そして利用するのは昼休みの時間帯が多い。正午ごろに会社を出たとしてお昼を食べる時間や戻り時間を考えると、移動は徒歩一〇分圏内が妥当であろう。
当たりをつけて十二時過ぎからの映像を見始めてしばらくすると、画面にライトグレーのジャンパーを着た男性が映った。
「羽倉さん、利用履歴から、この方の口座登録情報をご確認いただけませんか」
「はい。ええと……。取引時間は十二時十七分ですね」
羽倉はPCのキーボードをカタカタと操ると、「あった」と呟いたものの、表情を曇らせている。
「どうかされましたか」
「あの、大変勝手ながら当行の規定で顧客情報の画面はお見せできないのです。杓子定規で申し訳ない」
「そういうことでしたら、お名前だけメモしていただければ構いません」
「恐れ入ります」と頭を下げ、サラサラとボールペンを走らせ渡されたメモには、永井功一と綴られていた。
「これだけでお調べいただけるものでしょうか」
「えぇ、ありがとうございます。それと、小此木さんの写真をお借りできますか」
「履歴書のコピーで大丈夫でしょうか」
「はい」
「少々お待ちください」
羽倉はキーボードのWindowsキーとLのキーを同時押しして画面をロックすると、しばらくしてコピーを手に戻ってきた。
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