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「こちらでよろしいでしょうか」
「ありがとうございます」
少しあどけなさが残りながらも、口角をしっかりと上げた明るい印象のする写りである。
「つかぬことをお聞きしますが、小此木さんの趣味はご存知ですか」
「いま履歴書をコピーして、面接した時のことを思い出したのですが、映画鑑賞が好きだと言ってました。特に洋画のアクションものが好きだと」
「……分かりました。では、小此木和賀さんをお捜しするご依頼、お引き受けします」
「どうか、よろしくお願い致します」
羽倉は深々と頭を下げると、朝霧の姿が見えなくなるまで通用口で見送り続けていた。
たしかに連絡もつかずに欠勤が続いているとなれば心配は心配だが、ひとりの行員に対してそこまで心配するだろうか。目をかけている部下なら特別視するのも分からなくはないが、もしかして深い関係にあったりするのだろうか。
それは今回の件と別問題だと、朝霧は浮かんだ考えを打ち消した。
朝霧は事務所へと戻り、携帯の電話帳をスクロールしてある名前に辿り着くと、通話ボタンをタップした。何度目かの呼び出し音ののちに、呼び出し音が途切れて受話器の向こうに雑音が聞こえた。
『――ただいま、電話に出ることができません。ご用の方は発信音のあとに……』
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