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『そうなるわね。これは推測だから何とも言えないけど。とにかくあなたが受けた依頼は立花銀行の行員の方の行方を調べることなんだから、それを片付けることが先よ。あと、永井の自宅の住所送っておくわね』
「ありがとうございます。仁野さんにもよろしく伝えといて下さい」
『そうね。忙しいとかブツブツ言ってたわりにはすぐやってくれたし』
「矢代先輩、まさか脅したんじゃないですか」
『やめなさいよ、人聞きの悪い。市民の安否がかかってるから大至急って言っただけよ』
「さすがですね。ではそろそろ、失礼します。調査しないとなので」
携帯を耳から離し切電ボタンに指を伸ばしかけた時に『朝霧』と呼びかけられ、「はい」と再び携帯を耳に近づける。
『お礼は一晩でいいわよ』
「高いですね。依頼を遂行できるまで保留でお願いします」
『あら、上手ね。じゃ、時間が惜しいから切るわ』
「はい。ありがとうございました」
矢代との通話を終えて携帯のホーム画面を見ると、メッセージ通知のランプが点滅していた。本文を表示させると、地図アプリのURLが添付されている。
アクセスすると、永井の自宅と勤め先のユーロトレーディングがピン留めされていた。さほど離れていない距離だ。直線距離にして二、三キロといったところだろうか。
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