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1話
私は霧がかかる街の中で一人歩き続けた。
あの人――ダリエルスは昔からの婚約者だが。彼の気持ちがわからずにいた。いつになったらダリーは本心を見せてくれるのだろうか。私の目からぽたぽたと涙が溢れる。歩きながら静かに泣いたのだった。
ダリーと婚約したのは私がまだ十歳の頃だ。ダリーは私より三歳上の穏やかな少年で初めて会った時もにっこりと微笑んでいた。
『……初めまして。君が僕の婚約者さん?』
そう言って私の頭を撫でてきた。私は初対面なのに頭を撫でてくる彼に驚いてその手をはねのけてしまう。
『……な。何をするんですか?!私もいっぱしのレディですのよ!』
つい、叫んでしまっていた。側にいたダリーの両親や私の両親は苦笑いしていたが。今となっては生意気な小娘だと思う。けどダリーは怒らずに謝ってきた。それにまたしても驚いてしまったが。こうして私はダリーとの挨拶を何とか終えた。
私はここ――フォルド王国でも由緒ある名家のフィーラ公爵家の一人娘だ。厳格な父と明るい母に愛情たっぷりに育てられた。また、フィーラ公爵家は聖魔術や光魔法に特化した者が代々生まれやすい。それもあって王家からも婚約の打診があったと聞く。けどそれは父が断っていた。理由はわからない。代わりに大公家の子息であるダリエルスが婚約者に選ばれた。大公殿下は現国王陛下の弟君だ。確か、オーリス殿下といったか。その方の次男がダリエルスだった。
(本当にダリーは追いかけてきてくれるかしら。両親にはすごく心配をかけさせているけど)
私はそう思いながらも足は止めない。霧がひんやりと頬を撫でる。カツカツと編み上げブーツが石畳を叩く音と息遣いだけが辺りに響く。早くダリー、迎えに来て。そう願いながら霧の街を抜けた。
「……シンディー!」
後ろから不意に焦りの滲んだ男性の声が私にかけられた。立ち止まって振り向く。そこにはけぶるような金の髪に琥珀の瞳の美男が額に汗を浮かべて佇む。ぜいぜいと息を切らしている。よく見ると近くには栗毛の馬がおとなしく控えていた。
「あ。ダリー?!」
「そうだよ。何で家出なんかするんだ。ディア」
私の愛称を呼んだ彼は大股でこちらに来るとじっと怒りとも悲しみともつかない表情で見つめられる。ダリエルスは少しの間、そうするとおもむろに抱きしめてきた。ぎゅうぎゅうと強い抱擁に苦しいと思いながらも嬉しくもなる。
「……あの。置き手紙は書いておいたのよ。けど。はっきり言ってくれないあなたも悪いんだからね」
「……ディアは俺がはっきり言わないのが嫌だったのか?」
「そうよ。だってダリーは私と婚約してから一言でも「好き」とか「綺麗」とか言ってくれないんだもの。私も今年で十八歳よ。さすがに可愛いはないでしょう」
そう言うとダリーはふうとため息をついた。観念したらしくて抱きしめていた力を緩める。
「……わかったよ。ディア、愛している」
「やっと言ってくれたわね。私も愛しているわ。ダリー」
私は背伸びをしてダリーの両頬を手で包み込む。琥珀の瞳が見開かれた。軽くキスをしたのだった。
ダリーに馬に乗せてもらい、フィーラ公爵邸に帰る。エントランスホールに入ると待ち構えていた両親や家令に怒られた。それを宥めてくれたのもやはりダリーだ。彼と一緒に自室に行く。もう霧は晴れていたが。私はダリーと離れたくなかった。
「ダリー。私と今夜は寝ない?」
「え。ディア?」
「私ね。あなたを逃したくないの。確かな繋がりが欲しいのよ」
直接的に言うとダリーは真顔になる。けど耳や目元がうっすらと赤い。どうやら照れているようだ。私は彼の首に両腕を回して抱きついた。そのまま、唇にキスをする。するとダリーの手が後頭部と背中に回されてぐっと引き寄せられた。しばらくは唇を合わせて角度を変えながら堪能していたが。ダリーの舌がつんつんと唇を突付いてくる。薄く口を開くと中に差し込まれた。歯列や顎の裏側をなぞられてぴくっと身体が反応する。くちゅくちゅと淫らな水音と荒い二人の息遣いだけが部屋に響いていた。
しばらくしてダリーが唇を離す。つうと銀糸が伝ってぷつんと切れた。もう頭が茹だってダリーの事しか考えられない。
「……シンディー」
低い掠れた声で名を呼ばれた。ずくんと下腹部が何故か疼いた。ダリーは私の耳朶を軽く甘噛みする。
「……んっ」
「本当にいいんだな。後戻りできないぞ」
「いいの。ダリーの物に早くなりたい」
そう言うとダリーは深いため息をつく。私の肩と膝に両手を差し込んできた。ひょいと横抱きにされる。
「……今夜は長くなりそうだな」
「……ダリー?」
問い返すもダリーは答えてくれない。けど彼の琥珀の瞳には隠しきれない情欲の火が灯っていた。彼の首に両腕を回す。再びキスをされた。
寝室に入るとダリーは速歩きで天蓋付きのベッドに向かう。そのまま、優しくその上に降ろされた。ダリーは屈むと編み上げブーツの紐を不意に解き始めた。両方を器用に解いてしまうと脱がせてベッドの下に置く。その後でベッドに上がった。ぎしりと軋む音がする。ダリーは自分もブーツを脱ぐと乱雑に置いた。
「……じゃあ。始めるぞ。ディア」
掠れた声で言われた。ダリーはぽかんとしていた私の肩をとんと押す。ベッドに倒れ込んだ。素早くダリーがのしかかる。間近で彼の琥珀の瞳が私を覗き込む。すぐに深いキスを再開されたが。着ていたワンピースの上から柔柔と胸を揉まれる。唇を離すと唾液が溢れてしまい、つうと首筋に垂れた。ぺろりとダリーがそれを舐めとる。それにも反応してしまう。
「……あっ」
ダリーは首筋に幾度も吸い付いてきた。ちくっと軽く痛んだが。そうしている間にワンピースの釦を外された。鎖骨や胸元にも吸い付かれる。全部を外されてするりと袖を抜かれた。下着だけの姿になる。シュミーズとドロワーズも脱がされて生まれたままの姿に私はなった。自分から誘っておいて今更だが恥ずかしい。まずまずある胸などを両手で隠したが。ダリーはその両手を片手で一纏めにして上にあげた。
「……隠さなくていい」
それだけ言ってもう片方の手で右胸を揉んだ。強過ぎず弱過ぎずの絶妙な力加減でされる。けど明確な刺激はこない。ダリーは両腕を拘束していた手を外すと両胸の先端をきゅっと摘んだ。びりっと何かが背筋を駆け抜ける。摘んでいた両胸から手を離すと左の方に不意に吸い付かれた。ちゅうと軽く吸われてから舌で嬲られる。右の方はこりこりと親指で弄られながら揉まれもした。そんな刺激を受け続けていたらじわりと秘された場所から何かがあふれ出す。ダリーは胸からやっと唇や手を離す。先端は唾液で濡れて淫らに光っていた。あまりの光景に頬が熱くなる。お腹や脇腹なども唇でなぞられてから秘された場所にも彼の手が伸ばされた。くちゅと水音が鳴る。
「……すっかり濡れているな」
ダリーがふっと笑う。い、色気がダダ漏れだわ。つい思ってしまった。彼は秘所の割れ目を何度かなぞる。それだけでも感じてしまう。秘芽にそっと触れてきた。ぴりっとまた何かが背筋を駆け抜けた。それを見て取ったダリーは蜜壺の愛液だったかを秘芽に塗り付けて擦り出した。断続的に感じてしまい、喘いでしまう。
「……あっ。ああっ!」
蜜壺にも一本の指を插入された。最初は軽く掻き混ぜられるだけだったが。二本目を插入れられたら圧迫感や痛みを感じて眉を寄せてしまう。ダリーはそれに気づくと再び胸の先端に吸い付いた。舌で転がされたりしながら
蜜壺に插入れられた指も動く。二箇所を同時に刺激されてあっという間に昇り詰めていった。ふとある箇所を指がかすめた時に何かが強く背筋を駆け抜けていく。ダリーは気づいたらしくそこを重点的に指で刺激してきた。ぐりぐりとやられてぱんと一気に何かが弾けた。手や足が突っ張ってぴんと伸びた。背中がのけぞる。すぐに身体全体が弛緩した。ぐったりとベッドに沈み込む。
「……ディア。まだだぞ」
「……?」
何をと思ったらダリーが自身の着ていた衣服を脱ぎ始めた。上着を脱ぐとしっかりと筋肉のついた肢体があらわになる。スラックスや下穿きなども脱いで彼も生まれたままの姿になった。私の両足を掴んで大きく広げる。蜜壺に熱いものが押し当てられた。ぐっと狭い隘路にそれが入り込んでくる。同時に裂かれるような痛みを感じた。身体に力が入ってしまう。
「……くっ。ディア。痛いんだな。ゆっくり深呼吸してみろ」
「……あ」
そう声を出してから小さく頷いた。それでも痛いものは痛い。浅くはくはくと呼吸をする。すると身体から力が抜けた。その隙を突いてさらに奥に進んだ。
「……全部入ったぞ」
ダリーは額に玉のような汗を浮かべながらも言った。その後、しばらくは馴染むまで彼は動かなかったが。私が動いても大丈夫と告げるとゆっくりと律動を始めた。最初は緩やかだったが徐々に激しく大胆な動きになっていく。
「……あっ、あっ!」
「……ディア、ディア!」
パンパンッと肌同士がぶつかる音に淫らな水音、私の喘ぐ声にダリーの声。それらが部屋を満たしていた。私とダリーの熱気もだが。
「……あっ。も、もうらめ……!」
「……くっ。出すぞ!」
私が背をのけ反らせるときゅうきゅうと蜜壺が彼のものを締め付ける。一際、がつがつと穿たれた。強く腰を押しつけられて抱きしめられる。どくどくと熱い白濁が中に注がれた。じんわりと下腹部が温かくもなった。緩々と腰を何度か動かす。そうしてからずるりと引き抜かれた。どろりと白濁した液や破爪の血などが蜜壺から溢れる。
「……ディア。疲れたろう。後始末は俺がしておくから。寝てろよ」
「……うん」
彼の言葉に甘えてシーツにくるまった。この後、ダリーはぬるま湯で濡らしたタオルで身体を拭ったりしてくれたが。お風呂えっちもしてしまったのは予想外だった……。
――終わり――
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