神の手は気まぐれ

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神の手は気まぐれ

「さァウララちゃん、どうぞ。ご覧になってください」  看護助手のラブリが笑顔で患者のウララへ手鏡を渡した。 「……」  マックロードは黙ってウララの様子を見ていた。 「ふぅ……」  ウララは大きく深呼吸をした。緊張の面持ちだ。  ゆっくりと手鏡で自分の顔を確認した。 「あ!」  一瞬、目を疑った。    手鏡にはもう二度と映らないと思っていた顔があった。  成功したとしてもメイの顔だろうと思っていた。  だが、違ったようだ。 「どうして、この顔に?」  手鏡に映ったのは、キレイになった高瀬ウララの顔だ。  何度も手で触って確認した。 「フフゥン、成功だ」  ようやくマックロードは笑みを浮かべた。  確かに成功なのだろう。 「でもこれは。メイさんの顔ではないけど」  ウララは鏡を見つめて不思議そうな顔をした。 「まァね。途中で気が変わったんだよ」  マックロードはおどけて肩をすくめた。 「えェ?」 「なにしろこの『神の手』は気まぐれだからね。じゃァあとはよろしく。高瀬さん」  マックロードは父親に微笑んだ。 「あ、ハイ。本当にありがとうございます」  父親の高瀬は深々と頭を下げた。 「フフゥン、さァオレは地下アイドルのライブへ行ってくるか」  マックロードは相変わらずヲタ活に余念がないようだ。 「待ってよ。先生。今日は目黒の長老の手術が控えてますよ」  ラブリが伝えた。 「おいおい、言っただろう。神の手は気まぐれだって!」  マックロードは逃げるように病室を抜け出した。 「ま、待ちなさい。先生ェーーッ!」  ラブリの叫ぶ声が病院内に響いた。  THE END
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