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マックロード先生ェ
「先生。マックロード先生ェーッ!」
誰かが彼の耳元で名前を呼んでいた。
「ンううゥ」
彼は呻くが構わず肩を揺すっていった。
「先生ェーーッ!」
おそらくこの声は見習い看護師のラブリだろう。
「うッううゥン、明日から『フェアリー・モンスター』のライブがあるんだから、もう少し寝かしておいてくれよ」
彼は鬱陶しそうにラブリの手を押しのけた。
真っ黒なパジャマでベッドへ寝ていた。
彼の名は槇蔵人。
年齢は非公開だが、見た感じではアラサーだろう。
しかしイケメンでアイドルたちの面倒見が良い。
アイドルからも人気があった。
「ねえェ知らないわよ。そんな『フェアリー・モンスター』なんてワケのわからない地下アイドル」
ラブリは文句をつけた。だがまだ槇蔵人は起きようとしない。
「いいから早く起きてよォ。槇蔵人先生!」
見習い看護師の言う通り彼は、通称、『マックロード』と呼ばれていた。
彼は天才外科医だが、高額な治療費を請求するため悪徳外科医として名高い。
彼の言う『フェアリー・モンスター』というのは、まだデビューしたての地下アイドルだ。
彼は、医療の傍ら無名の地下アイドルのヲタ活に余念がなかった。
むしろヲタ活の合間に医療活動をしていると言っても過言ではない。
昨夜もヲタ活をする地下アイドルたちと遅くまで食事会をしていた。
しかし彼はアイドルたちに取っては救世主といっても過言ではない。
地下アイドルたちは僅かな手取りで、ろくな食事をしていないので栄養失調寸前だった。
ダイエットと言えば聞こえは良いが、栄養バランスが悪くいつ倒れてもおかしくない状態だ。
見習い看護師のラブリも同じ境遇だった。
悪徳事務所に騙され、ろくな食事も与えられず栄養失調と過労で病院へ運び込まれてきたのだ。
その彼女を槇蔵人が拾ったのだった。
今ではすっかり元気になり、彼の助手として働いていた。
「先生ェ、寝るなァ。起きろ。先生!」
なおもラブリはマックロードに馬乗りになって身体を揺さぶった。
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