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ジャスティス・ブラック
診察室には大人の男性とその娘らしい女性が座っていた。
まだ娘は女子高生くらいだろうか。大きな女優帽とマスクをしていた。
おそらく顔に巻かれた包帯を隠すためだろう。
「あ、槇先生ですか?」
父親が立ち上がり頭を下げ挨拶をした。
「ええェ、どうぞ、お掛け下さい。オレのことは、ぜひともマックロードとお呼びください。あなたは?」
黒衣の外科医はソファに腰をおろし、逆に父娘の名前を訊いた。
「あ、ハイ、私は高瀬祐也と申します。彼女は娘のウララです」
高瀬は隣りに座る少女を紹介した。
「……」
ウララと紹介された少女は黙ってペコリと頭を下げた。
顔は伏せているため大きな女優帽でほとんど見えない。
「先生。ウララちゃんの顔の傷を整形して貰いたいそうですよ」
傍らから見習い看護師のラブリがカルテを見ながら口を挟んだ。
あっけらかんと言うので、少し拍子抜けだ。
「ふぅむ」
おそらく包帯の下にキズがあるのだろう。
「……」
ウララは黙ってうつむいたまま、ギュッとハンカチを握りしめた。
「マックロード先生は神の手を持つ外科医とお聞きしまして。是非、娘のウララの顔を整形してもらいたいのですが」
父親の高瀬はマックロードの腕に期待しているようだ。
「いやァオレは美容整形を専門にやっているワケじゃないんでね」
さすがにいつも強気なマックロードもエクスキューズした。
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