ラブリ

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ラブリ

 高瀬はかすかに眉をひそめた。 「ウチの先生はヲタ活命なんですよ。湯水のようにお金を使って。お目当ての売れないアイドルのためにCDやグッズを買って上げてるんです」 「ええェ、まさか。天才的なドクターなのにヲタ活を?」  父親は信じられない様子だ。 「そうなんですよ。売れない地下アイドルにお小遣いを配ったり、栄養補給のために食事会を催したり、公私に渡って色々と(しも)の世話までみているんです。それも可愛らしい子だけ!」  ラブリは次々とマックロードの個人情報をバラした。 「おいおい、ラブリ。見習い看護師なのか、それともオレの評判を落としたいのか。どっちだよォ?」  マックロードは嘆いてラブリを睨んだ。 「ああァら、先生は性格的にはゲスだけど。外科医としての腕は世界一なんですよ。なにしろ『神の手を持つ外科医』なんですからねえェ」 「おいおい、腕は世界一って言うのは良いけど、性格的にはゲスって言うのは余計だろう。褒める倍以上、(けな)してるじゃないか!」  またクレームをつけた。 「でも可愛い女子には優しいんですよ。ラブリも先生に拾ってもらったんです。そうだ。ウララちゃんもラブリみたいに整形して上げたら?」  自分の顔を指差した。 「あのなァ、ラブリが二人も居たら怖いよ」  マックロードは眉をひそめた。 「お願いします。家と土地すべて売り払えば一億くらいにはなります。ウララの顔を元通りにしてください。このままでは不憫で」 「……」  ウララはずっとうつむいて黙っていた。
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