メイ

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メイ

 まったく皮肉なものだ。  運命は。  たった一分の遅いか早いかの違いで、運命は大きく変わっていただろう。 「ふぅん、わかりました。後悔先に立たず。運命の歯車が少しでも狂えば、大事故にならずに済んだかもしれないですからね」 「ええェ、どんなに泣き叫んでも亡くなった妻は帰って来ない。ですがウララの顔のキズは先生ならば治して戴けるのではと思って」  高瀬はすがりつくように頼んだ。 「わかりましたわ。やりましょ。マックロード先生に任せておいてください!」  見習い看護師のラブリがマックロードよりも先に応えた。 「おいおい、ラブリが請け負ってどうするんだよ!」  マックロードも困惑ぎみだ。  まだやるか、どうかは決めかねていた。 「大丈夫です。先生。ほらァまたとないチャンスですよ」  ラブリは偉そうにポンポンとマックロードの肩を叩いた。かなり強く叩くので厄介だ。 「おいおい、痛いよ。チャンスってなんだよ?」  どうせ下らない提案だろう。 「だって、美し過ぎる地下アイドルのメイちゃんそっくりに整形出来るじゃん」  とんでもない提案をした。 「え、メイちゃんですかァ?」  高瀬父娘は不思議そうに聞き返した。 「……」マックロードは無言のまま難しい顔で腕を組んだ。 「フフゥン、メイちゃんはマックロード先生の初恋のアイドルなんですよ。ほらァこれです」  ラブリはスマホの画像を見せた。  『チューし隊』のメイの画像だ。  センターで歌って踊っているのがメイだ。  インディーズアイドルの中でもトップクラスの人気だろう。
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