メイ

1/1
前へ
/13ページ
次へ

メイ

 『チューし隊』のメイの画像だ。  インディーズアイドルの中でもトップクラスの人気だ。  さすが、美し過ぎる地下アイドルの異名を取るほどビジュアル的には申し分ない。 「ふぅん、これがメイさんですか?」  だが高瀬は眉をひそめた。  それでもやはり父親に取って一番可愛らしいのは、愛娘のウララなのだろう。 「ええェ、この顔に整形して良いならボクが命にかえてウララさんの医療を担当させてもらいます!」  マックロードは逆に条件を出した。 「ン……」  父親の高瀬は即答できず腕を組んで唸ってしまった。ウララにとってどちらが幸せなのか。天秤に掛けているみたいだ。  顔に傷跡が残ったまま生きていくのと。  キレイだが、まったく別人の顔で生きていくのとでは、どちらが幸福なのだろうか。 「……お願いします。先生」  かすかにウララの声が聞こえた。  なんと言ったのか、よくわからない。 「ハイ、なんですか。ウララちゃん?」  すぐに見習い看護師のラブリがもう一度、彼女に聞き返した。 「お願いします。先生。メイさんの顔に手術してください」  ウララは、か細い声でマックロードに頼んだ。 「おい、良いのか。ウララ。そんな簡単に承諾して?」  父親の高瀬が念を押すように訊いた。 「ハイ、パパには悪いけど。今のこの顔をキレイな別の顔にして貰えるなら、たとえ元通りの顔にならなくても喜んで手術を受けます」  ウララの決心も堅いようだ。  それでも緊張と不安からだろうか、身体じゅうが震えていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加