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生真面目な受講生
数年前のことである、ヘルナンデスは京都の大学に留学中、私の講義がよほど気に入ったのか『根津教授を慕う会』の後援会メンバーだった。
そんな交流が続く中、あまりにも生真面目なヘルナンデスに好感を持った私は彼のアパートで日本経済と文化について夜が明けるまで語り合ったことがある。
私は第二次世界大戦で日本がアメリカに敗れ、国民の殆どが食することすらままならなかったと聞かされていた。
そんなどん底から僅か数十年という短期間でどうして現在のような経済発展が成しえられたのか、その根拠をまずは彼に話し始めた。
多くの日本国民はアメリカを敵視するものだと思われたが、なんとアメリカに習え、追いつけ、そして追い越せとその精進を惜しまなかった者もいたと前置きした。
ヘルナンデスは「カゾクやユウジンを失った、なぜアメリカを憎まナカッタの?」
彼が不思議に思うのも無理はない。私だって歴史を学ぶ何処かで『日本人には意地がなかったのか⁉』と憤りを感じた部分もあった。
しかし、賢明なアメリカGHQはさすがというか・・日本国民に『自由』という名の土産を用意し、これまでの帝国主義とは真逆ともいえる主権在民を軸とした憲法改正を国民に提案したのである。
長期にわたり君主を敬ってきた多くの国民は戸惑いながらも『これは明治維新の再来か』と悦に入る者も居たようだ。
そんな中、生き残る手段の一つとして自然発生したのが食の闇市だった。
改正された法律でも闇市は決して許されるものではなかったが、そこは主権在民を叫んで口も乾かぬ政府にすれば、看過せざるを得なかったのかもしれない。
これを機に流通が、いや経済が動き出したのではと、私は彼に話したようだが・・それが今日の日本経済の原動力だった・・とまで言ったかどうか?今となってはよく思い出せない。
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