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オーナーはテーブルに両手を乗せて、上からや横からくまなく観察した。それからスプーンを手に取る。第二関門も突破したようだ。
スプーンがそっとケーキを縦に切り取り、陶磁器の皿の上でカツンと音を立てた。口の中に運び、眼を閉じてしばらく味わってから、オーナーは腕を組んだ。
「底のバターには有塩を使った方がメリハリが出るかも知れん。フィリングにゼラチンを使ってないんだな。口の中で溶ける感じが良い」
「あっ、ありがとうございます!」
「それに」
オーナーは皿ごとまじまじとケーキを見た。
「きれいだし、アート感が良い。これは学校の教材に使っても良いか?」
まさかそんなことを言われるなんて思ってなかった。僕は驚きでビクッと跳ね上がってしまった。
「昨日は悪かったな。佐谷君。許してくれ」
オーナーはスマホのカメラで写真を何枚も撮りながら、ぼそっと謝ってくれた。
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