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佐谷さんは直径20センチの皿を4枚買ってくれた。
「この先もずっと、ここにいるんですか?」
車に乗る前に、ふと足を止めてそんなことを聞いてきた。叔母が隣にいたので答えに窮していると、佐谷さんは続けた。
「なんか、いてほしい気がして」
無責任な期待だな、と苦笑いしてしまった。
「私なんかまだまだだし、陶磁器とは一生付き合っていくつもりだから。いると思います」
「そっか。良かった」
はにかんだ佐谷さん。車に乗って手を振り、エンジンをかける。私と叔母は並んで手を振り見送った。車のエンジン音が遠くなっていく。
「......釉薬の勉強もろくろも、もっと大っぴらに勉強していいんだよ」
ドキッと心臓が跳ねたのか、私自身がビクッと跳ねたのか。恐る恐る叔母を見ると、にっこり笑っていた。
分業制の器作りより、個性を求めて独立する窯元もある。口には出さなくとも、反目していることは雰囲気から明らかだった。
「この町の人達に恩返ししたいから、悩んでるんよね」
私が中学生で他県に住んでいた時に、大震災に遭った。家の中のものがグラグラ揺れて、私の目の前で、観音開きの食器棚から全ての器がタイル床に落ちて割れた。私お気に入りの手捻りのカップも、両親の結婚記念のお皿も、全部。
幸いうちの地区は半壊にも至らない家が多かった。それでも町中ヒビだらけで、余震に怯えた。
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