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三月。
水たまりだらけの道を、僕は仲間の探検者とともにL区に向かって進んでいく。僕の家からそこまで遠くはなかったのが幸いした。L区ならば、徒歩で行くこともできるからだ。
彼女が指示した住所は、すっかり土と瓦礫に埋もれてしまった。
「ここだ。救出作業、始めるぞ!」
「ああ!」
ロボットに、心なんてないと思っていた。
でも彼女は、孤独に耐えかねて僕に助けを求めてきたのだ。愛する人を失い、世界から取り残されることに苦しみを感じていた。人から大事にされた物には、心が宿るというのは本当なのかもしれない。語られたモノにこそ、付喪神が宿ると信じられてきたように。
作業開始から、三時間後。瓦礫の中から防水壁に守られた“家”が出現することになる。
「タロ!」
その家のドア部分を、さらに一時間かけて壊した後。
僕に気付いた彼女は、錆だらけの鋼鉄の腕を伸ばして抱き着いてきたのだった。まるで人間が、長年会えなかった恋人にするかのように。
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