日常

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日常

「さっさと起きなさぁい!」  私の怒鳴り声で、朝が始まる。  私は中島梨花(なかじま りんか)、高校2年生だ。    私には、幼馴染がいる。    隣の家に住んでいる、同じ年の松田健人(まつだ けんと)。  梨花と健人は、小さい頃からお互いの家を行き来しながら育った。    健人の両親は、二人共朝早く仕事に出かける為、小学生の頃は、梨花の家で健人も朝御飯を食べたりしていた。  中学1年生になってからは、一人で朝御飯を食べると健人が言った時、健人が一人で起きれない自信しかない健人の両親は、梨花に起こしに来てもらうようお願いをしていて、仕方なく梨花も健人の家まで起こしに来ていた。  程々に勉強が出来て、程々に運動も出来る健人。  なのに、彼女がいたことは無かった。  …健人自身、中学1年生の時に、生まれて初めてトキメキを覚えた。  その相手は… 「キャー!梨花!梨花!マナトさんが生配信夜にやるって〜!」  朝7時。少し乙女な甲高い声が、松田家の中に響き渡る。  梨花は、健人のお母さんが準備してくれた朝御飯をテーブルに並べながら、 「はい、はい。分かったから顔洗ってきな。遅刻するよ」  そう言って、健人に支度をさせる。  これが、私達の毎日の日常だ。    健人が愛してやまないマナトさんは、LAYER《レイヤ》という男性アイドルグループの人だ。  ショッピングモールのイベントで見かけて一目惚れしたらしい。 「僕と2つしか違わないのに、歌が上手くて格好良くて、時々可愛すぎなの〜!」  と、初めてトキメキを覚えた彼は、毎日毎日、梨花にマナトの話を聞かせていた。    健人の毎日の日課は、マナトの個人投稿やグループ活動の情報収集を朝晩チェックをし、日曜日は必ず過去のイベントの動画を、家でひたすら観ながら叫び踊っていた。 「梨花ちゃん…、健人の事、仲良くしてくれてありがとね」  時々、健人のお母さんが申し訳無さそうにお礼を言ってくるのを、 「私は、健人の良さだと思うし、好きになるのは誰にでも自由だから、良いと思うよ」  そう言って笑うと、健人のお母さんも苦笑して頷いた。  ずっと、ずっと、変わらない。  これが、梨花と健人の変わらない日常。     
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