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4年後…
「ママ〜」
庭先で、女の子の声がした。
4歳になった、梨花の娘の咲良だ。
少し離れた所で花の手入れをしていた梨花は、手を止めて咲良の方を見た。
梨花の視線が自分に向けられたことに気付いた咲良は、
「健ちゃんの所に行っていい?」
と、梨花に問い掛けた。
健ちゃんとは、健人の事だ。
健人は、両親に、
「咲良ちゃんになんて呼ばれたい?」
と、聞かれて、『健ちゃん』と答えていた。
健人の両親の和美も晴人も、咲良が生まれてからの4年間、健人が梨花を好きでいることに気づいていた。
何も話さない健人の事を、見守っていた。
咲良が話せるようになって『パパと呼ばれたい』と言うかと思っていたのに、『パパ』という言葉を口にしない健人に、歯がゆさもあった。
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