恋心

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恋心

 高校を卒業して、地元の大学に進んだ健人と、少し離れた大学の女子寮に住んでいた梨花は、その4年間はあまり交流が無かった。  それでも、梨花が家に帰ると…、 「お!梨花!帰ってきたか!待ってた〜!」  と、梨花の帰りを事前に知っていた健人は、梨花の家で梨花の帰りを待っていて、梨花の顔を見ると嬉しそうに微笑んだ。  そんな健人に、胸をときめかせる梨花。 「もうねぇ、マナトさんサイコーだったんだからぁ〜♪」  その健人の言葉に、少し心が重くなる梨花。  そんな話をした後、健人は梨花を家へと連れて行く。  そして、マナトの近況報告や、ライブの話を長々としてくる健人に、梨花は、好きな気持ちが冷めること無く、ただただ健人の話を聞いていた。  大学を卒業して、地元の会社へ就職した健人と梨花。  学生の頃とまではいかないけれど、また平日の夜や日曜日は、予定が合う時はいつも健人の部屋で、二人でライブ動画を観ていた。    梨花は仕方なく、左手に健人の手作りうちわ、右手にマナトのメンバーカラーの黄色いペンライトを振り、その横で健人は、黄色いペンライトを両手に持って踊っていた。  幸せそうな健人を見ると、心が温かくなるけれど、苦しくもなる梨花。  そんな梨花の想いに気づいていない健人は、ただただ、自分の推し活を理解して見守ってくれる梨花の存在が、心から嬉しくて幸せだった。  
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