夜中の電話

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◆  だから翔子がどこに行ったのか、わたしにもわからないの。  あれ以来、大学にも来てないから。本当に、どこに行ったのかしらね。  ――ひき逃げはどうなったかって?  どうにもならなかったわ。だって、被害者なんていなかったんだもの。  ええ。それがね……あとになって知ったんだけど、ふたりが通ったっていうトンネルの周辺ってね、昔から幽霊が出るって噂があるんですって。そのせいで不審な事故が絶えないみたい。  その証拠に、亘の車には何かを轢いた痕跡は残ってなかったとか。翔子も亘も、何を見たのかしら……。  音? ああ、そうね、そういえば、なんだったんだろう。わたしにはなにも聞こえなかった。幽霊でもいたのかしら。今思うと、翔子があんなにギャーギャーうるさかったのは、パニックになってたのもそうだけど、音をかき消そうとしてたのかな。なんてね。  亘とはどうなったか? とっくに別れたわ。っていうか、捨てたんだけど。浮気してたのもそうだけど、それよりも、ひき逃げするような人間なんて、嫌だもの。  だから後のことは知らないわ。ふたりの問題だから。  見殺し? ひどいこと言うのね。だって、仕方ないじゃない。わたしも動揺してたの。手が滑ったのよ。  パニックを起こした人間って、おかしなことをするものよね。こわいこわい。
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