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翔子から電話があったのは、夜遅くのことだった。
その日はせっかくの休日だったのに、彼氏と予定が合わなくて、一日中バイトをしていた。翌日の講義は午後からだったし、ぐったり疲れて、やっと寝入ったところだった。そんなところに電話がかかってきた。
無視して寝てしまおうと思ったけれど、こんな夜中に翔子から電話がかかってくるなんて珍しかったし、一向に鳴り止む様子もない。仕方なく、ブルーライトに目をしょぼしょぼさせながら、スマホの通話ボタンをタップした。
途端に喚き声が耳に飛び込んできた。一瞬、いたずら電話かと思ったけれど、通話画面に表示されていたのはやっぱり翔子の名前だった。
わたしが出たとわかると「どうして早く出ないのよ」と怒鳴られた。寝ているところを起こされて不機嫌だったから、その言いぐさにムッとした。
「こんな時間になんなのよ」
かなりつっけんどんに答えたけど、わたしの不機嫌には気づかなかったのか、翔子はまた喚き始めた。何かを必死で訴えているのはわかったけれど、あんまり早口だし、キンキン声で全然聞き取れない。
とにかくパニック状態といった感じで、涙混じりになっていた。翔子が取り乱すことは珍しくなかったけれど、ここまで話が通じないのは初めてだった。
「ちょっと落ち着いてよ。何言ってるかわからない」
なだめながらようやく聞き出せたのは、何だかとんでもない話だった。
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