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「ここは…?」
少女は一人、人気のない石畳の上にいた。
肩を越えるほどに伸びた茶色の髪が風になびく。
鳥の鳴く声に空を見上げると、もう何年も拝む事のなかった太陽が煌々と
己を照らしていた。一体どういう事なのだろうか?先程まで自分はあの狭く暗い部屋に居たのに、どうして外にいるのだろう。学のない勝子でも今の状況が唯事ではないと察しがついていた。
眩しさで細んだ目で周りを見渡すも田圃と森が広がっている。少女の生地によく似た景色だったが、勝子はここは自分が育った村ではないという事に確信を抱いていた。何故かは分からない。そう感じたから、としか言い表すことしかできない。足を一歩踏み出すと素足に岩の温かさがじんわりと伝わってくる。
少女にとって此処が何処であるのかはさしたる問題ではなかった。ただ久方振りに感じる外の香りを堪能していたかった。
しかし、もう限界であった。空腹に精神的疲労。全てから逃れられたという安堵感からか勝子は意識を手放した。
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