其の五:恋に焦がれて

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 席には続く『合鴨のロースト・オレンジソース掛け』が運ばれてきた。 「オレンジって・・あの蜜柑に良く似た果物ですよね。お肉のお料理に、果物を使うんだ」 「食べてみろ。意外と美味いぞ」  私の様に慣れない者も多く来るのだろう。皿の上の鴨肉は既に切り分けられていて、ナイフとフォークを使わずとも、お箸で取れるようになっていた。下に敷かれた淡い橙色のたれが『オレンジソース』なのだろう。口へ運ぶと、確かに柑橘類の酸味と甘味が口に広がったが、鴨のくどい様な脂と合わさると、不思議と相性が良くて感心してしまう。 「着て来なかったのか、洋服」 「え?」 「欲しかったんじゃないのか」  私は皿から視線を外して、彼を見つめた。彼はナイフとフォークを手に、皿へと視線を落としたままだったけど。  箪笥の中に仕舞ったままの、あの水玉模様のワンピース。  貴方は知らないでしょう。  あの洋服はただの洋服じゃないの。  貴方が私の物欲しげな視線に気づいてくれた・・貴方の『気遣い』そのものなの。  他の人にはただの洋服でも、私にとっては宝物。 「・・勿体なかったもので・・」  切ない想いで、私は彼に苦笑いを向けた。  だけど彼はこう言った。 「次は着てこい」  彼の手にしたフォークが、馴染んだ様子で料理を彼の口へと運ぶ。 「駄目になったら、また買ってやるから」  ────善次さん・・    貴方は知らないでしょう。  私はもうずっと前から、貴方に『恋』をしているの。  好きなの。  どんなに傷付けられても  その一言で天にも舞い上がってしまうくらいに  泣き出してしまいそうになるくらいに  あの頃からずっと、どうしようもない程に、貴方に恋焦がれている────。 「はい。分かりました、善次さん」  貴方にとっては洋服の代金など取るに足らない端金。全てがただの気紛れなのかもしれないけれど。  私にとってその言葉は、一生の思い出になるんですよ。善次さん・・ ============ 瑠璃さん!スターギフトありがとうございます🙇‍♀️
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