くろまめとご主人様の恋人

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私は猫のくろまめ。 一年前、雨のなか倒れているところを 美咲ちゃんが見つけて保護してくれた。 寒くて、寂しくて、心細くてたまらなかったけど、 美咲ちゃんはプルプル震える私をギュッと抱きしめて 「大丈夫だよ」って優しく言ってくれた。 それから、色んな動物の匂いと鳴き声がするところに 連れて行かれて知らない人間に 体の隅々まで見られてチクリって 痛みがしたのを覚えてる。あのときは 敵だと思って威嚇しちゃったけど何度も通ううちに 良い人なのかなって思った。でもあれ… 注射は痛いからやだ。 そして黒猫だからあなたはくろまめねって 名前をつけてもらった。 最初は怖かったけど、美咲と過ごすうちに 美咲を家族みたいに思うように なっていったの。 だから、こんなやつとつがいになってほしくない! 美咲の足元でニャーニャーと抗議の声をあげると美咲はふふっと笑った。 「あら、おやつ欲しいのー?  じゃあちょっとだけよ?」 頭を優しく撫でられ 目の前に魚形のおやつが三粒差し出される。 ちがーーーーーーうっ!!!! でも食べちゃう。美味しいんだよねこれ。 「くろまめは可愛いなぁ」 むっ、憎きあやつの声が聞こえる。 私の名前を呼んでいいのは美咲だけよっ ギロリと美咲の恋人を睨みつける。 どう、怖いでしょ! でも、なぜか恋人は頬を緩め、 すまほというものを私に向けた。 カシャッと音が鳴る。 なんなの、こいつっ 「そうでしょ蒼多!うちのまめちゃんは世界一 可愛いんだから!!」 美咲はにっこり笑って蒼多の隣に腰掛ける。 私はわざと、美咲と蒼多の真ん中に陣取った。 そして美咲にもたれかかる。 横目で蒼多を見るとポカンとして見てるわ。 羨ましいでしょ? あんたなんかに美咲は渡さないんだから! 「「か、かわいぃぃっ!!!」」 ん? いや美咲が言うのはいつものことだし すごく嬉しいけど…。 「黒猫って不吉だっていうけど こんな可愛い子と暮らして不幸なわけないよっ」 蒼多…… 違うの!可愛がられちゃダメなのにっ! もうっ! でもちょっと嬉……いやほだされちゃダメ。 蒼多は私の敵なんだからっ!! 私は猫パンチを蒼多に繰り出した。 「いたっ」 威嚇も忘れない。 「ちょっ、くろまめ!ダメでしょ!大丈夫?」 あ、ちょっと傷がついちゃった。 ご、ごめん。そんなつもりじゃ……。 「くろまめ、大丈夫だよ、このくらいの傷」 私が謝っているのに気付いたのか、蒼多は 微笑んでいる。 ……。 「ごめんね蒼多〜くろまめったら… いつもはいい子なんだけど〜」 「ハハッ いいんだよ。 きっと美咲を僕に取られると思って嫉妬してるんだ」 なによ…よくわかってるじゃない…。 「え、そうなの、まめちゃん」 美咲に持ち上げられて目が合う。 照れくさくなって目を逸らすと美咲は 私をムギューっと抱きしめた。 「可愛いーーっ!やっぱうちの子世界一!!」 私にとっての世界一は美咲だけどね。 「ふふふ、僕にとっての世界一も美咲だよ」 そう言って笑う蒼多。 その途端美咲は真っ赤になり固まった。 この女ったらしめ! だけど、意外と話は合うのかもね…。 ふん、まぁ私を撫でるぐらいは許してあげる。 私は、蒼多の足元に座ったのであった。 (終わり)
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