死神の役割

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蒼はベッドから起き上がった。 数メートル先のリビングでは 寝たきりの祖父と介護で化粧っ気のない母親が 見えずとも見える。 「ふーーん。 お前がね・・」 蒼はぎょっとした。 目の前にいるはずのない人がいる。 ここは蒼の家であり、蒼の部屋である。 今は祖父と母と自分の3人で暮らしている。 「だ、だ、誰!?」 「私か? 私は死神だ。」 確かに、帽子、スーツ、靴、手袋に至るまで 全身黒づくめでいかにも死神の装束だ。 面食らった蒼を見透かすように死神は言う。 「紺次郎を迎えに来た。」 死神は顎を摩りながら帽子ごと顔を伏せた。 「蒼は直系だって聞いてたけどな・・」 そう言うと訝しげに覗き見る。 「な、何?」 「紫緒には能力はないが タイムキーパーとして右に出る者はいない・・ だから、今でも在宅で複雑な黄泉の流通を管理している・・」 死神はポツポツと意味不明な事を誰に聞かせるでもなく説いている。 「お前・・本当に何も知らないのか?」 「何・・?」 「蒼・・お前は死神の直系だ。」 と、唐突に死神が「睨むなよ・・」 大げさに上半身を仰け反らした。 反射的に振り向くと そこには突き刺すような視線を送る母親が立っていた。 「紫緒・・あの・・えと」 死神があたふたしている。 「いや・・あの・・・知らないとは知らなくて・・」 睨みつける母親の眼光が一筋見えた気がした。 だが、祖父の動く気配がするとすぐに出ていった。
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