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食堂に向かう、というのはフェイントだった。ギャラリーの生徒たちを巻くために一度食堂近くまで行ったけれど、人通りの多い中にまぎれると、千代子先輩を連れて屋上に向かった。
屋上のカギを平然と開ける僕を不思議そうに見ていた千代子先輩が「それって校則違反じゃないの?」とつぶやいた。
「ちゃんと先生に許可をもらったカギですー」
僕はそう言って屋上へのドアを開けた。
「どうぞ。僕だけの秘密基地」
そう言って千代子先輩を先に屋上へ出した。
「先生に許可をもらってカギをもらう? そんなことあるわけないでしょ?」
「本当。ちゃんと許可をもらったカギ――をベースにして作ったスペアキーだから」
僕の持っているカギを千代子先輩は信じられないものを見るような目で見ている。
「ようするに、ダメってことでしょ?」
「バレなきゃいいの」
僕は後ろ手にドアを閉めると、手慣れた手つきでいつものパラソルとふだんは使わないレジャーシートを広げた。
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